男と女二人だけ 手紙を書き手紙を読む…
今夜あなたもラヴ・レターを書きたくなるでしょう
舞台にはテーブルと二脚の椅子。並んで座った二人が、手にした台本を読み上げるだけの2時間。大掛かりな仕掛けも、目をひく照明や音響もない、このシンプルな舞台が、これほど見るものをとらえてはなさないと、誰が想像できたでしょうか。
俳優によって、観客によって、同じ作品とは思えないほど新しく生まれ変わる舞台。世代、年代、個性に応じて全く新しい『ラヴ・レターズ』が誕生します。俳優が身体的演技を行なわないゆえに、その声と姿に彼等の演技を超えた真情がほとばしるのを目の当たりにし、観客は新鮮な感動を共に分かち合うのです。
「ラヴ・レターズ」は1989年ニューヨークで初演されるやいなや、全世界で上演され静かなブームを巻き起こしました。パルコ劇場でも1990年8月19 日に幕を開けて以来、この一つの台本を、年齢も個性も異なった500組以上のカップルが読み続けています。
残念なことに2017年9月、26年間、本作品の翻訳・演出家として469回の 『ラヴ・レターズ』と共にあった青井陽治が天に旅立ちました。
青井陽治の 『ラヴ・レターズ』 に対する強い思いを受け取り、演出家として後を継いだのは、藤田俊太郎です。
今最も注目を集める演出家である藤田俊太郎は、青井の演出を大切にしながらも、『ラヴ・レターズ』の新たなページを紡いでいきます。
朗読劇の金字塔 『ラヴ・レターズ』。その新たな世紀にご注目ください。
STORY
アンドリュー・メイクピース・ラッド三世と、メリッサ・ガードナーは裕福な家庭に生まれ育った典型的WASP
(ホワイト アングロ サクソン プロテスタント‥‥‥‥アメリカのエリート人種)である。幼馴染みの二人は対照的な性格だ。
自由奔放で、束縛を嫌う芸術家肌のメリッサ。穏やかで、内省的、口よりも文章で自分を表現するのが得意なアンディー。
アンディーは自分の感じること、彼女についての自分の意見などを折にふれてメリッサに伝える。メリッサは手紙よりも電話の方が楽で好きだ。
しかし、電話で思ったようにコミュニケーションできないアンディーの手紙にはつきあわざるを得ない。
思春期を迎え、それぞれ別の寄宿学校に送られて過ごす二人。会えるのは休みで親元に戻った時だけである。
伝統的な暖かい家庭に守られているアンディー。一方、メリッサはアンディーより裕福だが、離婚と結婚を繰り返す母親のもとで孤独な思いを噛み締めている。
恋に目覚める季節、お互いを異性として充分意識する二人だが、どういう訳かぎごちなく気持ちは行き違い、しびれをきらしたメリッサは他の男の子とつきあってみたりする。そして、遂に決定的に結ばれるチャンスが巡ってきた夜、二人は友達以上にはなれない自分達を発見する。
大学を出た二人はいよいよ全く別の道を歩き始める…。
作者 A.R.ガーニー プロフィール
アメリカ、バッファロー生まれ。20年以上にわたりMIT(マサチューセッツ工科大学)にて文学を教える。2017年6月没。 主な作品は「ダイニング・ルーム」、「パーフェクト・パーティ」、「カクテル・アワー」、「ゴールデン・エイジ」、 「スイート・スウ」、「レイター・ライフ」、「シルヴィア」、「オーヴァータイム」、ミュージカル「レッツ・ドゥ・イット」 (コール・ポーター音楽)等。受賞歴も多数。「ラヴ・レターズ」は1988年、ニューヘイブンのロング・ウォーフ・シアターで世界初演が行われた。 1989年にはブロードウェイ、エディソン・シアターに登場。さまざまなアンディーとメリッサに出会いながらロンドン、パリ、オーストラリア、デンマーク、 オランダ、アルゼンチン、ドイツ、そして日本と、世界各地で上演されている。
訳・演出家:青井陽治 プロフィール
翻訳家・演出家。1969年、劇団四季演劇研究所入所。多数の舞台に出演すると同時に翻訳・訳詞・劇作も行う。1976年よりフリーとなり 、以後、海外戯曲の上演、ミュージカルの創作に独自の世界を築く。第3回湯浅芳子賞翻訳・脚色部門を受賞。第3回・第6回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。 2017年9月没。主な作品に「真夜中のパーティ」「リトルショップ・オブ・ホラーズ」「あなたまでの6人」「GODSPELL」など。「ラヴ・レターズ」では、 1990年8月19日の第1回公演から2016年12月10日の第469回公演まで訳・演出を務めた。
演出 藤田俊太郎 プロフィール
1980年生まれ、秋田県出身。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科在学中の2004年にニナガワ・スタジオに入る。近年の演出作に『LOVE LETTERS』『VIOLET』(英国版/日本版)『東京ローズ』『ラグタイム』『ヴィクトリア』『ラビット・ホール』『sound theater2023』『ジャージー・ボーイズ』『手紙』『ミネオラ・ツインズ』『東京ゴッドファーザーズ』『NINE』「絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』」。読売演劇大賞第22回優秀演出家賞・杉村春子賞/第24回最優秀作品賞・優秀演出家賞/第28回優秀作品賞・最優秀演出家賞/31回大賞・優秀作品賞・最優秀演出家、第42回菊田一夫演劇賞、第42回松尾芸能賞優秀賞受賞。あきた芸術劇場ミルハスアドバイザー。
1990年、青井陽治とパルコは「LOVE LETTERS」の上演をスタートしました。
当初の上演スタイルは、別作品の休演日や日曜日のマチネ公演の後に公演するというものでした。
出演者も30歳以上の方々に限っていましたが、若い俳優たちの「僕たちもLOVE LETTERSがやりたい!」という声に応え、パルコスペースパート3で"YOUNG AND PROMISING"というシリーズを始めました。
この冒険がやがてパルコ劇場だけでなく、日本各地の劇場での上演につながっていきます。
上演を重ね27年目の2016年8月、「LOVE LETTERS」469回目の公演をフィナーレに、パルコ劇場が一旦休館しました。
そして1年後の2017年9月1日、翻訳・演出家として26年間の「LOVE LETTERS」と共にあった青井陽治が天に旅立ちました。まるでパルコ劇場と歩みをともにするような、青井陽治の退場でした。
2017年12月、青井陽治の遺志を受けて、藤田俊太郎が「LOVE LETTERS」を演出します。
青井陽治の薫陶を受けた藤田俊太郎が、追悼の想いを込めて、その演出を大切にしながら、新たな歩みを進めていきます。
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演出 藤田俊太郎がそれぞれのカップルに寄せたコメントと舞台写真で一回一回の思い出が鮮やかによみがえります。