ナチスドイツの支配によって絶望と暗闇だけに覆われていた強制収容所。
そんな過酷で救いのない状況下においても人間の愛と尊厳を失わずに生きた男たちの物語。
これまでにも、ナチスドイツの強制収容所におけるユダヤ人迫害をテーマにした数多くの 小説、映画、演劇が作られています。その中でもこの「BENT(ベント)」という作品は、ナチスドイツによる同性愛者への迫害という、歴史に埋もれた極めて特異なテーマを扱ったドラマです。
舞台はナチス政権下のドイツ。ナチスがユダヤ人を大量虐殺した事実は広く知られていますが、その残虐極まりない時代に、ユダヤ人ではなくても過酷な運命を強いられた人間たちがいました。
ユダヤ人がダビデの星、つまりは黄色い星を胸につけることを強要されていた同じとき、 胸にピンクの星を付けることを強要され、虐殺されていった人たち。それは同性愛者だったのです。その数は実に25万~30万人にも及んだといいます。黄色の星の運命よりもさらに過酷な扱いを受けた人々の、知られざる事実。
この「BENT(ベント)」の物語はその過酷な運命に翻弄された一握りの人々を描いた、いつの時代にも訴えかける究極の愛の物語です。
主演・佐々木蔵之介、演出・森新太郎の初タッグ
このハードで崇高な愛のドラマに、佐々木蔵之介が挑みます。
今回は、佐々木が自ら主宰するユニットTeam申企画の一環として、2013年に「エドワード二世」で読売演劇大賞及び読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞するなど、今一番活躍が注目されている森新太郎を演出に迎え、名作中の名作『BENT(ベント)』を新たに上演いたします。
共演には、今一番脂がのっている俳優・北村有起哉、新納慎也、中島歩、小柳友、藤木孝など、多彩で豪華な俳優陣を迎えます。
狂乱の時代を舞台にした感動のドラマであり、世界中でセンセーションを巻き起こした『BENT(ベント)』。人間の愛おしい営みが、ある日なす術もなく崩れ去ってしまう。いつ起きるか分からない災害、いつ終わるとも分かぬ戦禍。そんな現代だからこそ共感できる崇高な愛のドラマを、21世紀の混沌に生きるすべての人々に向けてお贈りします。
ドイツ、ベルリン。第2次世界大戦が始まろうとしているきな臭い雰囲気が漂っている。
マックスは、ベルリンのアパートに恋人のダンサー・ルディと一緒に住み、定職に就くでもなく日々何とか小遣い稼ぎをして生きている。彼は毎日がとりあえず面白おかしく過ぎて行けば、それでいいのだ。
毎夜女装のママ・グレタが経営し、ルディがアルバイトしているクラブに入りアパートに持ち帰っている。ルディもあきれながらもマックスとの生活を続けていた。
しかしそんな享楽的な生活はある日突然くずれ去る。
ナチスの徹底したホモセクシャル狩りで、マックスとその恋人のルディはとうとう捕えられ、強制収容所送りとなってしまう。
極限状態の中で、彼は胸に同性愛者が強要されたピンクの星をつけたホルストという男と出会う。ホルストはホモセクシャルであるという理由で連行されていたのだ。
収容所の強制労働で彼ら二人に課せられた労働は、岩を右から左へ、そして左から右へ移すということのみ。来る日も来る日も、精神を崩壊させ、身体を痛めつけるだけの作業に明け暮れることになる。話してはいけない。近づいてもいけない。彼らには人間らしい行動をとることをなにひとつ許されなかった。
そんな単調な繰り返しの作業の中で、二人は次第に言葉を交わすようになる。短い休憩時間には 空を見上げながら看守に見つからないように小さな声で。次第に少しずつお互いを知っていくうちに、いつしかお互いに好意を寄せ合うようになる。
永遠に終わることのない収容所の作業をしながら、励まし合い生きていくマックスとホルストに降りかかる運命とは……。
ナチスによるもう一つの迫害の歴史と、極限の愛の物語。
【配役】
マックス : 佐々木蔵之介ホルスト : 北村有起哉
ルディ : 中島歩グレダ:新納慎也ウルフ:小柳友
収容所の大尉 他:石井英明親衛隊の中尉 他:三輪学士官 他:駒井健介
フレディ:藤木孝
1978年に朗読形式で上演され、翌1979年にロンドンのロイヤルコート劇場にて、マックスにイアン・マッケラン、ホルストにトム・ベルを配して初演され大センセーションを巻き起こし、その後劇場をウエストエンドに移してロングラン上演されました。
現在は世界35カ国語で上演され続けている『BENT』。パルコ劇場では、1985年に青井陽治訳、テリー・シュライバー演出、マックス役に役所広司、ホルスト役に高橋幸治を迎え”ホモ三部作”として華々しくセンセーショナルに上演されました。2004年には、鈴木勝秀演出、椎名桔平(マックス役)、遠藤憲一(ホルスト役)で再演。それ以外にもtptなどで上演されている傑作戯曲なのです。
1996年にはマーティン・シャーマン自らの脚本により、ショーン・マサイアスが監督、クライブ・オーウェン、ブライアン・ウィーバー、イアン・マッケランといった豪華キャストで映画化(邦題「ベント 堕ちた饗宴」)もされています。また、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーが、ゲイクラブの女装のママ・グレダ役で出演し歌も披露して話題になりました。
「ベント」
公演日程:1986年7月4日(金)~1986年7月27日(日)
会場:PARCO劇場
作:マーティン・シャーマン
訳:青井陽治
演出:テリー・シュライバー
出演:役所広司、鷲生功、池田鴻、小川真司、古田将士、塩島昭彦、滝田裕介、高橋幸治
<スタッフ>
美術:石井強司 照明:吉井澄雄 音響:高橋巖 衣裳:田代洋子 舞台監督:矢野森一
企画制作:パルコ/翔企画
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「ベント」
公演日程:2004年1月7日(水)~2004年2月1日(日)
会場:PARCO劇場
作:マーティン・シャーマン
訳:青井陽治
演出:鈴木勝秀
出演:椎名桔平、遠藤憲一、高岡蒼佑、佐藤誓、永島克、東地宏樹、
篠井英介
<スタッフ>
美術:ニール・パテル 音楽:横川理彦 振付:宇治川まさなり
衣裳:前田文子 照明:倉本泰史 音響:井上正弘
ヘアメイク:高橋功亘 演出助手:長町多寿子 舞台監督:小林清隆
企画製作:(株)パルコ
特設ページ
https://stage.parco.jp/web/play/bent/