1959年生まれ、新潟県出身。法政大学文学部卒業。93年『ゾーンを左に曲がれ』でデビュー。98年『ブエノスアイレス午前零時』で第119回芥川賞受賞。作品に『死亡遊戯』(河出文庫)、『SATORI』(河出文庫)、『刺青』(河出文庫)、『ソロ』(講談社文庫)、『サイゴン・ピックアップ』(河出書房新社)、『境界』(講談社)、『スミス海感傷』(集英社文庫)、『陽炎の。』(文春文庫)、『スモーク・オン・ザ・ナイフ』(河出書房新社)、『マダム・グレコ』(河出書房新社)、『礫』(講談社)、『鎌倉古都だより』(新潟日報事業社)、『オレンジ・アンド・タール』(光文社文庫)、『愛人』(集英社文庫)、『奇蹟のようなこと』(幻冬社文庫)、『さだめ』(河出文庫)、『黒曜堂』(マガジンハウス)、『藪の中で・・・』(徳間文庫)、『紫の領分』(講談社文庫)、『雨月』(光文社文庫)、『雪闇』(河出文庫)、『箱崎ジャンクション』(集英社文庫)、『焦痕』(集英社)、『第二列の男』(作品社)、『幻夢』(文藝春秋)、『心中抄』(河出書房新社)、『キルリアン』(新潮社)、『波羅蜜』(毎日新聞社)、『武曲』(文藝春秋)がある。
1976年生まれ 兵庫県出身、99年に舞台芸術学院の同期生の西條義将と劇団「モダンスイマーズ」を旗揚げ。以降、全劇団公演の作・演出を務める。劇団の代表作に、『デンキ島』三部作、『夜光ホテル』、『死ンデ、イル。』など。劇団外の主な舞台脚本に『時には父のない子のように』、『世界の中心で、愛をさけぶ』、『第32進海丸』、『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン〜』、『天井』(作・演出)、『赤い城黒い砂』、『罪』(作・演出)、『エネミィ』、『ポテチ』(作・演出)、『淋しいのはお前だけじゃない』、『パレード』、『木の上の軍隊』他多数。演出作品に、新国立劇場二人芝居『ブレス・オブ・ライフ』がある。パルコ・プロデュース作品への舞台脚本は『LOVE30〜女と男と物語〜兄への伝言』、『SHOW STAGE NO,1 Triangle〜ルームシェアのススメ〜』、『Triangle Vol.2〜探し屋ジョニーヤマダ〜』、『ハンドダウンキッチン』(作・演出)がある。09年に『まほろば』で第35回岸田國士戯曲賞受賞。15年には、1月4日24時より『木の上の軍隊』(NHKBS プレミアム)が放送予定。またモダンスイマーズ公演『悲しみよ、消えないでくれ』(1月23日〜2月1日 東京芸術劇場シアターイースト)、オフィスコットーネ公演『漂泊』(田村孝裕演出3月19日〜30日 吉祥寺シアター)、3・4月に『正しい教室』(作・演出 パルコ劇場 他)の上演が控えている。
1968年生まれ、熊本県出身。映画、ミュージッククリップ、CM などの映像制作に携わり、00年監督2作目の『ひまわり』で、第5回釜山国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。01年の『GO』では、第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞を始め、数々の映画賞を総なめにし一躍脚光を浴びた。04年の『世界の中心で、愛をさけぶ』のメガヒットは、社会現象となり、その後も『北の零年』、『春の雪』、『クローズド・ノート』、『今度は愛妻家』を監督し、ヒットメーカーの地位を確立。10年の『パレード』で、第60回ベルリン国際映画祭・国際批評家連盟賞受賞。また11年には、縁のある釜山国際映画祭が製作したオムニバス映画『Camellia』の中の1 作『Kamome』を監督し話題となった。舞台演出は『フールフォアラブ』(パルコ劇場他)、『見知らぬ女の手紙』(パルコ劇場他)、『パレード』(天王洲 銀河劇場)、『テイキングサイド』(天王洲 銀河劇場)、「趣味の部屋」(パルコ劇場他)に続き、今回が6作目となる
1979年生まれ、埼玉県出身。95年、シングル『MUSIC FOR THE PEOPLE』で、V6のメンバーとしてCDデビュー。音楽活動と平行してTV、映画、舞台など幅広いジャンルで精力的に活動を展開している。現在『アメージパング!』(TBS)に出演。また、GREE恋愛シュミレーション『ラブセン〜V6とヒミツの恋〜』が配信中。近年の主な出演作品に《舞台》『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹 NINAGAWA VERSION』(蜷川幸雄演出)、 『鉈切り丸』(いのうえひでのり演出)、『夜中に犬に起こった奇妙な事件』(鈴木裕美演出)、《映画》『人間失格』《TVドラマ》『平清盛』(NHK)などがある。
1991年生まれ、鳥取県出身。10年、映画『彼岸島』のヒロインとして女優デビュー。さらに同年、連続テレビ小説『てっぱん』(NHK)のヒロイン役を務め、以降、映画やTVドラマで活躍。今回が初舞台となる。また、ガールズバンド「LAGOON」のボーカルMIORIとして、11月26日にシングル『君の待つ世界』でデビュー。近年の主な出演作に《映画》『風立ちぬ』(声の出演)、『貞子3D2』《TV》『Dr.DMAT』(TBS)、『妻は、くノ一~最終章~』(NHK BSプレミアム)、『天才!志村どうぶつ園』、『アナザースカイ』(以上、NTV)などがある。
1963年生まれ、神奈川県出身。「演劇企画集団THE・ガジラ」の中心的な俳優として多くの作品に出演。舞台を中心に映画・TVドラマへの多数出演。近年は演出家としても活躍。俳優として04年に第39回紀伊國屋演劇賞個人賞、演出家として06年に第14回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。近年の主な出演作に《舞台》『ハンドダウンキッチン』(蓬莱竜太作・演出)、『鉈切り丸』(いのうえひでのり演出)《TVドラマ》『ペテロの葬列』(TBS)などがある。
1964年生まれ、兵庫県出身。85年『銀河旋風児SUSANOH』より「劇団☆新感線」に参加。以降なくてはならない存在として、数々の劇団公演に参加。代表作の『直撃!ドラゴンロック』シリーズでは、主役の剣轟天として活躍。近年の主な出演作に《舞台》ミュージカル『愛の唄を歌おう』(宮本亜門演出)、劇団☆新感線『蒼の乱』、大人の新感線『ラストフラワーズ』(以上、いのうえひでのり演出)《映画》『小野寺の弟・小野寺の姉』などがある。
東京都出身。74年、映画『恋は緑の風の中』で主演デビュー。76年、映画『大地の子守歌』、『青春の殺人者』でブルーリボン賞新人賞など9賞を受賞。98年、映画『愛を乞うひと』では、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など国内の映画賞を席巻。その他受賞多数。近年の主な作品に《舞台》『メアリー・ステュアート』(宮本亜門演出)、『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹 NINAGAWA VERSION』(蜷川幸雄演出) 《映画》『ぼくたちの家族』、『蜩ノ記』《TVドラマ》『僕のいた時間』(CX)、『55歳からのハローライフ』(NHK)などがある。
人気作家・藤沢周の芥川賞受賞作『ブエノスアイレス午前零時』。元々藤沢ファンの行定勲は、この作品が刊行された当時から映画化を熱望し、藤沢自身にもその思いを伝えていた。
「藤沢さんのもつハードボイルドな、ちょっと距離を置いて社会を見つめている視線がとても映画的だと思った。静かだけれど凶暴なんですよね。雪深い新潟の田舎の、閑古鳥が鳴いているような温泉旅館からブエノスアイレスに到達するミスマッチさがなんとも魅力的」
藤沢も行定の気持ちを受け止め、その行く末を見守っていたという。
「行定さんの映画は、たとえばラブストーリーでもそのなかに冷酷なものや毒を抱え込んでいて、そこに共鳴する。『ブエノスアイレス午前零時』はいろんな読み方ができると思いますが、行定さんは書き手の核を確実に掴み取っている」
それが今回、舞台化を果たすこととなったきっかけは、行定と森田剛との出会いだった。映画監督の傍ら、近年は舞台演出も手掛けている行定は森田を見て「現実に縛られた男を演じてほしい。そんな男が奥底にあるものを出す瞬間を演じたらきっと面白い」と考えていたという。実際に二人のタッグが実現することになり、行定の脳裡に浮かんだのが『ブエノスアイレス午前零時』だった。
「森田くんは、決して多弁な人ではない。けれども心の奥に、ひょっとしたら本人も気づいていない何かを隠し持っている感じがするんです。そう感じたとき、主人公のカザマの姿が彼に重なった」
行定からそのことを聞いた藤沢は当初、意外に感じたという。それもそのはず、小説に描かれたカザマは森田とは似ても似つかない風貌なのだ。
「でも、森田さんと実際に会ってみてわかった。カザマの静謐さ、しかし翳りの中に強烈なパッションを燃やしているところ、それが森田さんにぴったりなんです」
この小説を舞台化するにあたり、大きなポイントとなるのがブエノスアイレスの描き方。小説ではブエノスアイレスはあくまでも盲目の老嬢の記憶の中にしかなく、現実には登場しない。
「もちろん直接ブエノスアイレスの夜を描くこともできた。でも日本のさびれた温泉地にいるのに、彼女の心の中にはちゃんとブエノスアイレスの夜があるという、記憶の遠近法で表現したわけです。小説では日本からボカの街を思うという一方向の矢印だけれど、これが舞台になればおそらく双方向になるだろう、それがいまから楽しみですね」
藤沢の思いを受け、行定は脚本家・蓬莱竜太とともに一から話し合い、脚本づくりをしている。
「映画では、一人の俳優が全く違う役を演じるのはかなり難しいけれど、演劇ならばそれができる。自分の奥底にある人間……今回でいえばニコラスになれる。人種も性別も時空も飛び越えられるんです。だから今回の舞台では、小説には登場しないブエノスアイレスが実際に立ち現れます」
重要な点が小説から大きく変わることになるが、藤沢の行定に対する信頼は揺らがない。それは行定が読者としてきちんと藤沢作品を掴んでいると感じているから。
「僕は小説に決して答えを書かない。だからたくさんの余白が生まれ、そこを読者が読み込んでくださる。もちろん自由に読んでいただきたいんですが、行定さんはいつも確実に捉え、僕自身もびっくりするようなイメージを提示してくれるんです」
長年思い続けてきた作品を、予想しない形で手掛けることになった行定。意気込みは強い。
「藤沢さんの作品は常に戦っている。だから書かれてから10年以上経ってもまったく色あせない。それは僕が映画をつくるときに目指しているところです。演劇に企画の段階から携わるのは初めての経験ですから、プレッシャーはあります。でも、原作を初めて読んだ時の初期衝動のまま、この世界を描き出せれば」
信頼する読み手による舞台化に対して、藤沢は大きな期待を寄せる。
「小説では『カザマはこう考えた』と書けるけれど、舞台ではモノローグは使えない。森田さんをはじめとするキャストの皆さんの表情、仕草、眼差しで表現していく部分が見どころでしょう。演技によって、新たな世界の風景を開いてくれたらと思っています」
V6の一員として活躍する一方で、舞台俳優として蜷川幸雄、いのうえひでのり、宮本亜門といった日本有数の演出家から求め続けられている森田剛。彼が次に挑む舞台が『ブエノスアイレス午前零時』。演出を行定勲が務めるが、これは森田自身が熱望した結果。
「行定さんは以前から僕の舞台を観に来てくださっていた。そのたびに寄せてくださる感想がいつも、自分では意識をしてないところばかり。一緒に作品づくりが出来たら楽しいだろうなと思ったんです」
今作で森田は、都会で挫折し故郷のホテルで働く男・カザマと、ブエノスアイレスのマフィア、ニコラスの二役を演じる。
「一人二役という意識をあまり強く持たず、カザマとニコラスを一人ずつ作っていくことで二人の差が生まれたらいいと思っています。とくにカザマのように心の中に屈折を抱えている男が恋に落ちる、その姿をうまく演じられたら」
なかでも注目は、劇中で踊られる本格的なアルゼンチンタンゴ。
「元々、タンゴへの興味はありました。きれいだし、足さばきがかっこいい。実際に練習をしてみると、男女二人の距離感や間合いが面白い。互いの熱や感情がこぼれないように踊るのが魅力ですね。殺陣と同じで役が入ってきたらきっとダンスも変わっていくはず。本番では豊かなタンゴをお見せできると思います」
常に私の頭の中にあったこの作品を舞台化できて今から興奮しています。雪深い温泉宿にあるダンスホールとブエノスアイレスの風景のコントラストが私を魅了しました。若い男と老女との孤独な魂の邂逅が奇跡を起こすという、デカダンスを舞台で創り上げたいと思っています。主人公のカザマは以前からご一緒してみたかった森田剛さんが引き受けてもらえると聞いて喜んでいます。社会からドロップアウトした等身大の男をどんな佇まいで演じるのか、そして、素晴らしい身体能力を持つ彼が情熱的なタンゴをどんな風に踊るのか今から楽しみでなりません。