結婚式を終えたばかりの夫婦・恵子(水野)と遠山(丸山)に周囲は驚きを隠せない。
付き合っているそぶりどころか接点さえもなかった二人が、突然「できちゃった結婚」したのだから。しかも、当の二人は結婚式を終えたばかりだというのに、なぜかよそよそしい。
その謎は、遠山のバンド仲間・門田(大倉)だけが知っている。そのせいか門田の機嫌は悪い。
遠山と門田の会話からは、巨額のカネの動きが見え隠れする。
遠山の元恋人・依代(京野)も、いぶかしげな目を遠山夫婦に向ける。
まだまだ遠山に未練たっぷりな依代は、その謎を解き、二人を別れさせようという魂胆が見え見えだ。

そんな中、取材旅行中だった漫画家夫婦の進藤(河原)と素江(犬山)が運転する車が、遠山を轢いてしまう。遠山はその事故の後遺症で右手が動かなくなる。
折りしも、遠山がギターで作曲したアルバムがインディーズで大ヒット。1億近い印税が転がり込んで来たばかりのことだった。次回作を出したい遠山だったが、右手を負傷した彼に曲作りはできない。
それを償うために、遠山の田んぼで働き始める進藤夫婦。
素江を連れ戻そうとやってくる漫画雑誌の編集者・木戸(伊藤)。ところが、遠山家で働くうちに、進藤は恵子に気持を奪われていき、そのことに憤る木戸は、ますます素江への想いを募らせて……。
もつれにもつれあった思惑をかかえた7人が、一つ屋根の下でひしめきあい、ある時は事実を隠し、ある時は感情をむき出しにするが故にますますもつれた関係に陥っていく。そんな7人が作り出す居心地の悪い空間の中で、遠山と恵子は互いに、もがくように愛を求めていく。
やがて、遠山は恵子の助けを得て新曲を作ろうと決意するが、門田は、「お互いに愛しているなら、離婚しろ」と遠山に迫る……。




この作品とは切っても切れないのがギター。舞台上でも、儚いギターサウンドが披露されますが、その作曲・演奏を担当するのが、日本ジャズ界最高峰のギタリスト渡辺香津美氏。
今回、渡辺香津美氏の大ファンである演出のG2がラブコール、 渡辺氏も作品に共感し、画期的なコラボレーションが実現しました。
ギター1本とは思えない音楽世界を、時には包み込むように優しく、 時には攻撃的に激しく、そして、その手に掴もうとしても叶わない儚い メロディーを奏でます。
舞台上で、丸山や大倉、そして水野が実演するギター奏でるメロディも、渡辺氏の作によるものになります。




日常と非日常の狭間を切り取り、それを巧妙な台詞で乾いた笑いに変換する作家・倉持裕と俳優の個性をその物語の中で十二分に引き出す演出家・G2が、この不思議な関係の中で、静かに、そしてぎごちなく進む、切ない愛の物語を紡ぎ出します。