ラ・テラス
作/ジャン・クロード・カリエール
演出/山田和也


退屈で平凡な一日のはずだったのに、
今日が人生の分岐点になるかもしれない…!?

別れ話は、ある日突然やってくる。
トラブルは、予期しないときに振りかかる。
ちょっと風変わりで、どこか魅力的な登場人物たちが巻き起こす、
おかしなおかしな物語。
悩みを抱えながらも一生懸命に生きているすべての人に送る、
フランスの巨匠、J.C.カリエールの傑作シチュエーションコメディ!



 1997年に発表されたジャン・クロード・カリエールのコメディ「ラ・テラス」は登場人物たちがとても魅力的に描かれています。きっと、人間を真面目に描けば描くほど、そこには「笑い」があり、そしてちょっぴり「切なさ」というスパイスを私たちのなかに注ぎ込んでくれるのでしょう。  それはどこか自分自身がみることのできない「じぶん」がそこにいたりするからです。そして、いつもは思い悩んでしまいがちな出来事でも、客観的にみたり、ちょっと角度を変えてみることで今まで大問題と感じていたことが、とてもささいな事に思えたり、あるいは今まで思い悩んでいた自分自身に「笑い」を覚えたりすることでしょう。
そして、私たちが無意識になっていることを意識することでもちょっと違った人生がみえてくるかもしれません。
 この「ラ・テラス」の登場人物たちはみんなちょっと人生に迷いを感じながらも、日々の生活に追われ、立ち止まって人生を振り返る時間を創ることが下手な人々のようです。私たちも、仕事や家庭のことに追われ、ついそうなりがちなパターンといってもいいでしょう。
 このお話は「これで私の人生いいのかしら?」とどこか心の奥底で思っている人たちがひょんなことから出会い、それぞれの人生が交わっていきます。つまり、他人が自分の人生を映し出す鏡となり、その鏡をみた時、「これってもしかして、私?」と疑問形から、「こんなの私の人生じゃない!!」という否定形、そして「これが私の人生だ。」と受け容れ、「よっしゃ、がんばるぞ。」という肯定形にシフトしていく、そんな、私たちが日々繰り返していることを非常に軽やかに陽気に描いた、そして、元気になる人間喜劇です。

登場人物はこの7人。
それぞれの人生が交差する瞬間、

それは、
人生の分岐点となるかもしれない。


出演者(登場順)
西村 雅彦
西村雅彦/エチエンヌ
手塚理美
手塚理美/マドレーヌ
宮本裕子
宮本裕子/不動産屋の女
真行寺君枝
真行寺君枝/大佐婦人
近藤芳正
近藤芳正/アストリュック
池田成志
池田成志/モーリス
藤村俊二
藤村俊二/大佐

ストーリー
 舞台は居心地の良さそうなテラス付きのマンションの一室。
とても風の強い秋の日。若いカップルのエチエンヌ(西村雅彦)とマドレーヌ(手塚理美)がちょっと遅い朝食、ブランチを食べている。このカップル、どうやら二人のアツアツ黄金期を過ぎ、倦怠期に突入しているようだ。
 女が男に話しかける、そして、男は聞いているのか聞いていないのか、気のない返事をする、新聞を読みながら・・・。よくある風景である。


女今日はでかけるの? 別に。男
女じゃあ、ずっと家? 多分、君は?男
女私は出かけるわ。 で、何時に戻るの?男
女戻らないわ、永遠に。


 突然、彼女、マドレーヌから別れを告げられるエチエンヌ。平穏だったはずの朝の時間が逆回りを始める。どうやら彼女は数日前から出ていく準備をしていたらしい。手にはすでにスーツケースを持ち、これから男が迎えに来ると言う。
 唖然とするエチエンヌは自分一人ではこのマンションの家賃は払えないと言うと、用意周到、彼女はすでに不動産屋へ連絡済みで、これから次に借りにくる予定の人が下見にやって来ると言う。 すると、ドアのベルが鳴り、不動産屋のお姉さん(宮本裕子)が一人目の見学者を連れてやってくる。この不動産屋のお姉さん、お人好しの不器用なお姉さんのようだが、かなりのトラブルメーカー、というか、自らトラブルを呼び寄せてしまうタイプ。
 突然の彼女から突き付けられた別れの宣言で、心の整理もできない中、マンションへ次々とやってくる訪問者たち。これが個性派揃い。そして、何かしら問題を抱えている人々のようだ。
 まずは、やけにテラスにこだわる大佐の妻(真行寺君枝)。おそらく旦那とは20歳程の年齢差があり、よぼよぼに年老いた自分の夫の世話に手を焼いている様子。そして、次にやってくる見学者、アストリュック(近藤芳正)。
部屋に入るなり、自分の弁護士に電話をかけはじめるは、腹がすいたから、何か食べ物はないか、あるいは疲れたから寝ると言って、ベッドルームで高いびきをかきはじめるは、あげくのはては友人のモーリス(池田成志)を呼びつけて、一緒にコーヒーを飲み始める始末。登場人物はこの7人
 いきなり訪れた彼女からの別れの宣言と、次々とやってくるヘンな訪問者で、現実を把握できないまま、巻き込まれ、翻弄されるエチエンヌと、なかなか迎えが来ず、いらいらしているマドレーヌ。不動産屋のお姉さんもかなりの個性派、いきなりこの部屋でマッサージを始めてしまう。そしてどうやら自分の生活にフラストレーションを感じている様子。そしてアストリュックの友達のモーリスは、きれいな女性を見るとすぐに恋に落ちてしまう単細胞。
案の定、モーリスはマドレーヌに一目惚れ、いきなり彼女に求婚する始末。そっけなく彼女が断わると、いきなりテラスへ飛び出し、「俺は彼女に嫌われている!」と叫び、飛び下りてしまう。  そんな騒ぎの中、大佐婦人が大佐(藤村俊二)を連れて戻ってきた。
かなり歳をとっているようだが、気はシャキッとしている。しかし歳にかなわず、足下はおぼつかない。とんちんかんな会話が続き、夫人がテラスを見にいこうと誘う。しばらくすると夫人があわてて戻ってくる。すると、大佐が風に飛ばされてテラスから落ちたらしい。外は朝からの強風で、大佐の体重では飛ばされても当然?のはずではあるが・・・。急いで階下に降り、大佐を探しにいくのだが、どこにも見当たらない。はたして大佐はいずこへ行ってしまったのだろう。そして、彼らの人生は・・・。

作/ジャン・クロード・カリエール Jean-Claude Carriere
1931年フランス生まれ。
50作品以上の映画の脚本を手掛けている。代表的な作品ルイス・ブニュエル監督「昼顔」(カトリーヌ・ドヌーブ主演)「銀河」「ブルジョワの密かな愉しみ」など。
1968年からは演劇作品も手掛けるようになり、世界的演出家のピーター・ブルックとは24年間制作活動を続けている。代表作は「マハーバーラタ」(日本でも銀座セゾン劇場で来日公演)、「愛のメモランダム」など。
演出/山田和也 Kazuya Yamada
1961年生まれ。東京都出身。
日本大学芸術学部演劇学科演出コース卒業。在学中に三谷幸喜らと『東京サンシャインボーイズ』を 結成、劇団解散後も三谷作・山田演出コンビで多くの作品を送りだす。三谷作品以外にも、ミュージカル、商業演劇、翻訳劇と、ジャンルにとらわれない様々な作品を演出している。
〈主な演出作品〉
「君となら〜Nobody Else But You」「巖流島」「笑いの大学」(読売演劇賞最優秀作品賞受賞)
「バイマイセルフ」「きららの指輪たち」「ローマの休日」(菊田一夫演劇賞大賞受賞)
「パパに乾杯」「南太平洋」「サウンド・オブ・ミュージック」「マディソン郡の橋」など。
翻訳/丹野郁弓・武藤洋
音楽/川崎晴美 美術/和田平介 照明/沢田祐二 
音響/高橋巖 衣裳/宇野善子 ヘアメイク/高橋功亘 
舞台監督/松坂哲生

ラ・テラス[公演概要]

本公演関連ホームページ  西村雅彦公認HP 西村雅彦公認HP