寺山修司(1935-1983)の遺言とも言える最後の演出作品となった『レミング』(1983)。現代社会の抱える問題や若者の内面を寺山らしいシュールな言葉とイメージの連鎖で挑戦的に表現しています。

寺山修司没後30年を記念した2013年の舞台(パルコ劇場 他)では、維新派の松本雄吉と少年王者舘の天野天街が上演台本化。
演出家として、壮大な野外劇を得意とし、言葉を解体し変拍子のリズムに乗せて再構築する「ヂャンヂャン☆オペラ」という独特の表現を特徴とする松本雄吉が、『レミング』に新解釈で挑み、トータルシアターとして唯一無二と言える壮大なスケールの作品を出現させました。

今回はその再現に留まらず、さらに上演台本の改訂と新たな演出を加え、新キャスト・劇場を生かしてスケールアップした『レミング~世界の涯まで連れてって~』へと生まれ変わります。

スタッフ陣は維新派公演でも松本雄吉の創作を長年支える国際的クリエイター。
美術の林田裕至は、三池崇史監督作品のほとんどの美術を手がけており、音楽の内橋和久はベルリンを拠点に活躍中のギタリスト・作曲家で、維新派の舞台同様、『レミング』でも全ての楽曲を作曲する他、生演奏で舞台に参加します。

初演では、八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊が演じたそれぞれ個性的な役柄。今回は
溝端淳平、柄本時生、霧矢大夢、麿 赤兒 という、
こちらも注目度も実力も高い俳優陣が挑みます。また、オーディションでは、
複数の役を兼ねる17名の精鋭キャストが選ばれました。

占部房子、笹野鈴々音ら演劇界の実力者たちがアンサンブルとして出演。さまざまな顔を見せる!

寺山修司はパルコ劇場にゆかりの深い劇作家と言えます。
「中国の不思議な役人」(1977年)と「青ひげ公の城」(1979年)をパルコ劇場に書き下ろし、演出したのをはじめ、数々の作品をパルコ劇場で上演しました。
他界したのは1983年の「毛皮のマリー」稽古中のこと。その年の「毛皮のマリー」「青森県のせむし男」は急遽追悼公演となりました。
さらに、2003年には、寺山修司没後20年・パルコ劇場30周年記念作品として「青ひげ公の城」(三上博史主演、J.A.シーザー演出)、2009年には「中国の不思議な役人」(平幹二朗主演、白井晃演出)、2年前の2013年には寺山修司没後30年・パルコ劇場40周年記念作品として「レミング ~世界の涯まで連れてって~」を上演致しました。そして美輪明宏演出・主演「毛皮のマリー」はレパートリーとして上演され続けています。

この冬スケールアップしてリニューアル上演される新たな『レミング ~世界の涯まで連れてって~』にどうぞご期待ください!

東京都品川区五反田本町二丁目一番七号、幸荘十号室。
コック見習いのタロ(溝端淳平)とジロ(柄本時生)、畳の下にはタロの母親(麿赤兒)が潜む下宿屋の仕切り壁が忽然と消えた!
修理を依頼しても、大家は何故か下宿屋の存在そのものを否定する。
壁のなくなった部屋には、次々に奇妙な訪問者が入り込んでくる。
30年以上も同じ映画を撮り続けているという撮影隊と往年の大女優(霧矢大夢)、患者、囚人たち…。
部屋に“都市”が流れ込んでくる。
夢か現実か?目眩くシーンの連鎖。
壁が消えた世界で、タロとジロは何処へ行くのか…?

主な配役

コック1〈タロ〉(中華料理のコック見習い)

溝端淳平

コック2〈ジロ〉(中華料理のコック見習い)

柄本時生

影山影子(大女優)

霧矢大夢

母親(畳の下に住んでいるコック1の母親)

麿 赤兒

他 アンサンブルキャスト17名

花井貴佑介 廻飛呂男 浅野彰一 柳内佑介 金子仁司 ごまのはえ 奈良坂潤紀 岩永徹也 奈良京蔵
占部房子 青葉市子 金子紗里 髙安智実 笹野鈴々音 山口惠子 浅場万矢 秋月三佳

【スタッフ】音楽:内橋和久 美術:林田裕至 照明:吉本有輝子 音響:佐藤日出夫
衣裳:堂本教子 ヘアメイク:西岡達也 振付:金子仁司/広崎うらん
歌唱指導:伊藤和美 演出助手:石内詠子 舞台監督:大田和司
宣伝美術・絵:東 學 宣伝写真:渞 忠之 宣伝衣裳:立花文乃 宣伝:吉田プロモーション
プロデューサー:笹目浩之/祖父江友秀/田中希世子 制作:池邉里枝 製作:井上 肇
     企画・制作=パルコ/ポスターハリス・カンパニー 協力=テラヤマ・ワールド/維新派 製作:パルコ

プロフィール

寺山修司(てらやま・しゅうじ) 《作》

1935年青森生まれ。詩人、劇作家、演出家、映画監督。67年「演劇実験室◎天井棧敷」を設立。世界屈指の前衛劇団として国際的に活躍。代表的舞台に『毛皮のマリー』『奴婢訓』『レミング』。映画監督としても『書を捨てよ町へ出よう』『田園に死す』の他、実験映画も次々に発表。83年、47歳で急逝。寺山の死を境に、日本の前衛演劇は終焉したと言われている。パルコ劇場では、77年『中国の不思議な役人』、79年『青ひげ公の城』を自身の作・演出で上演。劇場の歴史を語る上で欠かせない伝説的な公演となった。没後も追悼公演として83年『青森県のせむし男』を上演。『毛皮のマリー』は美輪明宏レパートリーとして繰り返し上演し、観客を魅了し続けている。パルコ劇場開場30周年である2003年には、三上博史主演で『青ひげ公の城』を、2009年には白井晃演出、平幹二朗主演で『中国の不思議な役人』を上演し好評を博した。2013年は、寺山修司没後30年として、演劇、映画、展覧会、出版、放送など多数開催された。2015年も生誕80年を記念して各地で様々な公演・イベント等が多数行われ、人気を博している。

松本雄吉(まつもと・ゆうきち) 《演出》

1970年に大阪で「日本維新派」(87年に維新派と改名)を結成し、1974年以降の全ての作品で脚本・演出を手掛ける。維新派は、主宰の松本を軸として常に「演劇」という枠では語りきれない演劇的活動を続けてきたことで知られる集団。野外に自らの手で建築する劇場、数々の映画の美術監督として知られる林田裕至による圧倒的な美術、「ヂャンヂャン☆オペラ」と名付けた関西弁のイントネーションを生かしたケチャ音楽のような台詞、インプロヴィゼーションユニット「アルタード・ステイツ」を率いて世界でも評価の高い内橋和久の音楽という、すべての要素をディレクションした前衛的な総合芸術として作品を発表している。
1996年大阪府舞台芸術奨励賞、1999年大阪府舞台芸術賞、2002年朝日舞台芸術賞、2004年読売演劇大賞優秀演出家賞、2008年朝日舞台芸術賞 アーティスト賞、2008年芸術選奨文部科学大臣賞、2011年紫綬褒章、2013年大阪市市民表彰を受賞した。最近の演出作品には『MAREBITO』(2013年、岡山・犬島海水浴場、瀬戸内国際芸術祭参加作品)、『石のような水』(2013年、京都・京都芸術劇場春秋座/東京・にしすがも創造舎、演出および美術)、『十九歳のジェイコブ』(2014年、東京・新国立劇場/兵庫・兵庫県立芸術文化センター)、『透視図』(2014年、大阪・中之島GATEサウスピア)などがある。今年は9月19日〜27日まで奈良・曽爾村健民運動場にて維新派新作野外劇「トワイライト」を上演し、好評を博した。