おはつ

あらすじ
 時は幕末、文久三年の秋。大阪新町の「かや乃」という店にお初(松たか子)という名の女郎がいた。哀れにも胸を病み、今日も密かに喀血をする。そんなお初の望みはただ一つ。この命が尽きる前に、せめて狂おしいほどの恋をしてみたい。幼い頃から憧れていた「曽根崎心中」のお初、徳兵衛のように。
 お初にはいつか夫婦になろうと契りを交わした馴染み客、油商「菱屋」の跡取り息子正太郎(小市慢太郎)がいた。正太郎には幼い頃からの無二の親友、醤油商「桶川」の手代直助(佐々木蔵之介)がいる。二人は当節はやりの剣術修行に町道場へ通い、殊に直助は目録を授かるほどの使い手となっていた。
 雨模様のある晩、浪人風の侍に因縁をつけられた直助と正太郎は曽根崎露天神の森で密かに私闘に及ぶ羽目に陥る。追い詰められた直助は不本意にもその侍を斬ってしまう。後も振り返らず逃げ出す二人。しかし一部始終を私娼のおれん(江波杏子)に見られていた。
 おれんは目の前の惨劇がやがて金になるかも知れぬと考える。
 その後、二人は「かや乃」の客となった。そこで、お初に身請けを申し出ている先客に出会う。この年の春、京に誕生した「新撰組」の局長近藤勇(渡辺いっけい)である。身請け話を前に覚悟を迫られるお初。正太郎との恋のゆくえは、そしてやむを得ない事情とはいえ人を斬ってしまった直助の身は、かくして運命の歯車は大きく軋み始めるのだった。


 
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