第1幕
1884年、変わりゆくパリの街に一人の画家がいた。その人の名はジョルジュ・スーラ(ジョージ)。ジョージは彼の愛人のドットをモデルに、その後多くの人に傑作と認められる作品《グランジャット島の日曜の午後》のためのスケッチを始める。彼女は自分に関心を持ってほしいのに、ジョージは絵だけに心を奪われている。
日曜の午後、水辺に集まる人々。最近のパリの変化について話し合う老婦人と看護婦。釣りを始める二人のセレステ。芝生に座っている召使いのフランツと料理女のフリーダ。彼らにつきまとう小さな女の子。ジョージの友人ジュールとその妻イヴォンヌ。ボート屋の男。アメリカ人観光客の夫婦、ミスターとミセス。彼らは「普段の日曜日」を思い思いに過ごしている。
ジョージはそんな彼らをひたすらスケッチし続ける。ドットが彼を待ち続けることに疲れ、ジョージの子供を宿しながらもパン屋のルイと共に生きることを選び、彼の元から去ってもなお、ひたすらに。
ひとりになったジョージは人間関係に集中しようとしても、常に自分の芸術がその妨げになってしまうことに葛藤する。
かつてジョージの母親は言った。「関わりなさい、ジョージ、つながりを持つことよ」
その日も水辺には様々な人々が集まっていた。ただこの日はやけに騒がしい。言い争う二人のセレステと兵士。不倫ををめぐるジュール、イヴォンヌ、フランツ、フリーダの大喧嘩。それらは公園内のほぼ全員を巻き込んだ騒動となる。
その時ジョージが言った。
「秩序を」
喧噪に満ちたその場が、ジョージの言葉によって少しずつバランスを取り戻す。一人一人の存在が美しい調和を醸し出す。
ジョージが完璧な位置で凍りつかせたその情景こそ、あの《グランジャット島の日曜の午後》だった。
第2幕
1984年、美術館のギャラリーに《グランジャット島の日曜の午後》の絵が掛かっている。
この時代のジョージは発明家であり彫刻家でもある。彼の発明品であるクロモルーム#7はジョルジュ・スーラの《グランジャット島の日曜の午後》の記念として製作したものだ。
ジョージが祖母のマリーと共にジョルジュ・スーラの歴史を振り返っていると、クロモルーム#7が作動した。
大きくなる音楽。舞台にはクロモルームによって照射されたレーザービームによって色が溢れる。そしてその色彩の中から「グランジャッド島の日曜の午後」の絵が現れる。
そこはジョージを讃えて行われた美術館のレセプション。会場は沢山のゲストで溢れ返っている。美術館のディレクターであるボブ・グリーンバーグ、作曲家のナオミ・アイセン、パトロンであるハリエット・ポーリング、ナオミの友人ビリー・ウェブスター、客員キュレーターのチャールズ・レドモンド、画家のアレックスとベティ、美術館の広報担当リー・ランドルフ、アートの批評家ブレア・ダニエルズ。
ジョージは彼らの間を縫って歩き回る。彼は、曾祖父がとても苦手としていた社交性に長けていた。
グランジャット島を訪れるジョージとデニス。今は高層ビルだらけだ。老婦人のお気に入りで彼女がよく座っていた場所の木だけが、昔の面影を止めている。
クロモルームの設置場所について話し合っているうちに、決別するジョージとデニス。
ひとりになったジョージはマリーからもらった赤い小さい本を手にする。それはかつてドットが持っていたものだった。その本の裏に書いてあるドットのメモを読み、ジョージは自らの人生を深く反省する。そこへドットが現れる。彼女は1984年のジョージに、彼の曾祖父のジョージが持っていた、ビジョンを探る力を与える。
ジョージは曾祖父と同じ言葉を呟く。
「秩序、デザイン、テンション、構図、バランス、そして光」
何も描かれていないキャンバスと無限の可能性とともに一人残されるジョージ。
「白。何も描かれていないキャンバス。彼のお気に入り…無限の可能性」
一人の芸術家の人生とともに描く人々の人生。それぞれの人生が交わる時、そこには壮大な「人生」というハーモニーが生まれる…。