ベント SCHEDULE
1934年、ベルリン。ナチスドイツ下、迫害され強制収容所に連行されていったのはユダヤ人だけでなく、同性愛者もそうであった。

 マックスというやくざな男。「嘘をついても、人を騙しても自分だけは生き残る」、それが彼の哲学である。そして不運や災難は自分を避けてくれると信じている。いわばマックスは社会との協調性などといった概念からはかけ離れている人間で、彼にとっては日々がお面白可笑しく過ぎていけばそれでいい、自分さえよければそれでいいという男だ。
 ナチスの徹底したホモセクシュアル狩りでマックスとその恋人ルディはとうとう捕えられ、汽車で強制収容所へ送られる。その車中でルディはナチスになぶり殺される。そしてマックスはそのとどめを刺す役を強要され、瀕死の恋人を狂ったように殴り続ける。いきなり覚めない悪夢の世界に引き込まれてしまったマックス。それでもなんとか、得意の取引で最悪の状態から抜け出そうとするマックス。ピンクの星から黄色い星へ・・・。そんな、極限の状態の中で、彼は胸にピンクの星をつけたホルストという男と出逢う。ホルストはホモセクシュアルであるという理由で連行されていた。
 収容所の強制労働で彼ら二人に課せられた仕事は、岩を右から左へ、そして左から右へ移すこと。来る日も来る日も、精神を崩壊させ、身体を痛めつけるだけの作業に明け暮れることになる。話してはいけない、近づいてはいけない、彼らには人間らしい行動をすることが許されなかった。
 そんな作業を繰り返していくうちに、二人は次第に言葉を交わすようになる。短い休憩時間に空を見ながら看守に見つからないように小さな声で。そうして少しずつお互いを知っていくうちに二人は愛しあう。
永遠に終わることがないこの収容所で、二人は触れることなく、見つめあうことなくセックスをする。感じあい、慰めあい、そして達した時、彼らは自分が生きていることを実感する。
 しかし月日が経つうちにホルストの心身は限界にきていた。気遣うマックスに応える気力すら失っていた。
そんな二人の仲に気付いた看守はある日、マックスの目の前でホルストを射殺してしまう。今まで幾度となく愛する人を裏切ってきたマックスはこの瞬間すら、生きるために心を無にしようとした。しかし、看守が去るとマックスは放心状態のまま、目の前に横たわった男を抱き上げ、愛を囁き、そして死体を放ると、収容所を囲む高圧電流の流れる柵に吸い寄せられるようにまっすぐと向かっていった。



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