海のそばに建つ真新しい一軒家。
この家の主、杉本正樹(前田吟)は、妻に先立たれ、三人の子供もそれぞれ大阪や東京などで自活
しており、一人暮らし。終の住処にと、定年後に家を新築したが、突然病に倒れ、以来寝たきりの生
活を余儀なくされた。
だが、今の正樹には希望があった。それは、3か月前から住み込みで働いている介護ヘルパー、
さおり(星野真里)の存在。子供たちよりずっとやさしいし、若くてかわいい。さおりがそばにいて
くれるだけで正樹は生きようという気持ちになれた。できることなら結婚を申し込みたいとまで思っ
ているが、正樹にはそれができない事情があった。実は正樹は、口もきけず、体の自由も失った、
いわゆる植物状態。語りかけるさおりに受け答えする様子はまるで新婚夫婦のようだが、その声は、
さおりには届くことのない心の声なのだ。
明日は妻の七回忌。久しぶりに子供たちが帰ってきた。まず、長女の正子(七瀬なつみ)と次女の
美樹(菊池麻衣子)が相次いで到着。二人はどちらも饒舌で気が強かった。介護ヘルパーが、中年の
おばさんから若いさおりに代わっていたことを知らなかった二人は、取り調べさながらの面接を開始。
さおりの生い立ちから介護士になった経緯までを事細かに聞いていく。
そこへ正樹の主治医で正子の幼なじみ、薮一平(池田成志)が回診にやって来る。薮は正樹の回復
を信じており、いつも何かしら変わった治療を試みている。それは正樹にとっては迷惑極まりないも
のばかりだったが、薮はマイペース。子供たちに会えて喜んでいる、と勝手に正樹の気持ちを代弁す
る始末。
最後に現れたのは、長男の大樹(堺雅人)。姉たちと違っていつもノーテンキな大樹が、さおりを
かばうような発言をしたため、姉妹の怒りは加速。さおりのような若い子に父を任せてはおけないと
口撃する。そこで意外にもさおりが反論。父親の世話を平気で赤の他人に任せていたあなたたちに、
そんなことを言う資格はない。そして、自分は正樹と結婚したいと思っている、と言い始める。子供
たちは唖然、正樹もびっくり。
翌日、正子の指輪がなくなる事件が起こり、さおりに疑いの目が。正樹は必死にさおりをかばおう
とするが・・・。
やがてあらわになっていく、家族それぞれの思いと葛藤。
そして、正樹の切ない恋の行方は?
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