2010年7月24日(土)
パルコ劇場の舞台に立つのは、今回が3回目になるのですが、久しぶりの出演でワクワクしています。◇2008年、ベニサンピットでの初演から、今回は劇場も、キャストも変えてのリニューアル上演を迎えます。初演から、お気持ちの上で大きく変化されたことはございますか。
実際に劇場に入り、舞台装置が組み上げられたものをみたとき、想像した通り、「パルコ劇場」という空間に作品がしっかりはまっていると確信しました。
ニューヨークやロンドンでは、無言劇、つまり、フィジカルシアターというジャンルがあるのですが、パルコ劇場では、そういったジャンルの作品を上演するのは今回が初めてだと思います。
そういった意味でも、ここから発信できることが今、とても楽しみです。
これまでも、言葉を使わない身体での表現というものが、もっとも自分に合っていると思って戦ってきましたし、生の舞台でお客様に何か伝えたい、という想いで挑戦を続けてきたので、いよいよこの作品を再演できる日を迎えられることを、とてもうれしく思います。
作品自体の演出や内容については、大まかなところはほとんど変えていません。しかし、初演時、53回も公演をやったとはいえ、気づかなかったことがたくさんあり、今回の上演にあたって、また新しい発見が多くありました。また、新しいキャストが2人加わったことで、初演では見えなかった作品のストーリーや、それぞれのキャラクター性の変化によって、僕自身が演じる役の個性にも変化が起きています。そういった化学変化が、作品自体に良い効果を生んでいると思います。◇本作は全編台詞なしで展開され、終始目が離せない構成になっていますが、特に注目してほしいシーンなどはありますか。
例えば、離れたところにいる相手に手を振って合図をするなど、日常のふとしたときに、実は、ジェスチャーで何かを伝えるということってよくあると思うんです。そういった実際生活に起こりうるジェスチャー、マイムというものを表現化したものがこの舞台です。言葉がないということ以外は、ある意味とてもリアルな作品なんです。ですからそれを家で観るのではなく、実際劇場に足を運んで、生の舞台を観るということに、とても意味があるように思います。観る時の精神状態によって、自分自身の中に何が起きているのかというのを、言葉ではなく、身体表現で感じることによって、自身でいろいろと考えられるので、言葉で表現するよりも、とても強いものを感じられると思います。◇最後に、初日を楽しみにしている方々へ、メッセージをお願いいたします。
初演のベニサンピットは森下にある、町工場を改装したとても面白い空間でしたが、今回渋谷の街で劇場がかわることでも、作品自体、僕たちが意識している以上に変化していると思いますので、前回ご覧いただいた方々はそういった変化も楽しんでいただければ嬉しいです。また、初めてご覧いただく方は、フィジカルシアターの面白さを体感し、楽しんでもらえたらと思います。
劇場入りをして改めて、パルコ劇場の前に立ってみたとき、とても感動しました。僕たちがやっている表現というのを、パルコ劇場で上演できるのは、ある意味『事故』であるような気がするんです。それは、もちろんいい意味で(笑)。本当に良い機会を頂いたなと思っているし、こういう表現の作品を、パルコ劇場で上演できるということが、すごく感慨深く感じられて、劇場前のポスターを見たとき涙ぐんでしまうほどでした。僕がやってきたものは、とてもマイナーな表現だと思っていたので、今回いろいろな方々にご覧いただけるのは、本当にうれしいです。多くの人に「これ面白いね」と言ってもらえたら、さらにうれしく思います。◇2008年、ベニサンピットでの初演から、今回は劇場も、キャストも変えてのリニューアル上演を迎えます。初演から、お気持ちの上で大きく変化されたことはございますか。
劇場のキャパシティが大きくなった分、どれだけ熱を与えていけるか、ということを意識していますね。ベニサンピットでの初演時は、そこにキャストがいるだけで威圧感があったんです。けれど今回は、劇場という箱の中でキャストが勝手にやっているのを、外から俯瞰というのではなく、いかにして一緒に箱の中に入ってもらうか、というのを気にして創っています。ただ、視覚的な表現なので、そういった意味では俯瞰ということに関しても、違った可能性がある。場所が広くなった分、その俯瞰とズームアップをどういう風に受け止めてもらえるかというのも実験だとおもうし、あえてそういう余白を残しておいても良いと思います。劇場が大キックなったからといって、動きをおおきくしようということではなく、基本は初演と変えずに、それがどういう風にお客様に伝わるのか、ある意味チャレンジなのではないかなと思っています。◇本作は全編台詞なしで展開され、終始目が離せない構成になっていますが、特に注目してほしいシーンなどはありますか。
また、作品はキャストによって変わるので、今回ずいぶん印象が変わったかなと。同じことをやっても、演じる人によって全然違う作品になるものなので。今回、加わった安藤洋子さん、藤田善宏さんは、お二人とも大きな舞台が似合う方々ですし、とてもいい方向にそろってきたかなと思います。
少ない人数で、客席に圧力をかけられるという意味では、キャスト個人のキャパシティの問題が大きくかかわってくるので、そういう力が大きい素敵な二人が来てくれたなと思っています。
もちろんストーリーはあるのですが、最初からお話を追おうとすると、80分間、なにも分からないまま過ぎていってしまうかもしれません。その瞬間瞬間でいろいろと考えてもらえると、観ていて寄りそえることがいろいろあると思います。それをつなげて、「結局何がいいたかったんだろう」とか、最初から探り始めると迷ってしまう。だから、自分なりの見方をしてもらうと楽しめると思います。ストーリーも含めてシンプルなのですが、言葉がないので、どう受け止めるかで個人の差が出てくる。だけどそれを、「どう見るんだろう?」と考えてしまうと、迷ってしまうので、全編通して何かを拾おうというのではなく、その場その場で何が起きているのかを見てもらえると、見やすいんじゃないかと思っています。◇最後に、初日を楽しみにしている方々へ、メッセージをお願いいたします。
全然違うジャンルの表現をしてきた人たちが集まって、共通言語を探しながら楽しんで創っている作品で、是非観ていただきたいです。それぞれのキャストが、普段やっていることとは違った楽しみ方をしているので、キャストのファンの方たちも「こんな部分があるのか」とか、思ってもらえるとおもいます。『空白に落ちた男』は明日24日(土)19時、いよいよ開幕!
そして、今回の作品はもともと、首藤さんが「是非やりたい」と言ってくださったことがきっかけで始まった企画なので、ある種、首藤さんの生きざまそのものだと思いますし、僕も同じです。
観客の方々も参加できるような舞台になっていると思うので、ワクワクしてもらえたらいいなと思います。ちょっと、「開いた状態」で観てもらえるとうれしいです。
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