「豊饒の海」観劇レポートが到着しました!(2)

「豊饒の海」観劇レポートが到着しました!(2)

2018年11月21日(水)

舞台「豊饒の海」東京公演も早くも折り返し地点を過ぎました。
今回も、スマホアプリ「パルステ!」のゴールド/シルバー会員の中から選ばれた観劇レポーターの方よりレポートを頂戴いたしましたので、ここにご紹介させていただきます。
 

 
 三島由紀夫「豊饒の海」と言えば、そのタイトルと「難解さ」の評(噂)は聞き及んでいたので、全巻まとめて芝居にするという製作発表があったときは「かなりの冒険だな」と思った。そして主演を張るのが東出昌大。調べてみると、この作品がまだ2作品目だという。
 有名な原作モノとまだ2回目の舞台出演の演者、この2つを聞いただけでもビックリしたが、さらに驚いたのが演出家が外国人だという。日本人の演出家でも難しいと思われる作品なのに。いやいや、逆に日本人の演出家なら、そんな無謀なオファーがあっても受けないか・・・。
 といった感じで、芝居を観る前から二重の意味で“相当な”作品になるぞ、と思っていた。
 まず、基礎知識として、三島由紀夫の「豊饒の海」の予習。この作品は以下の四巻から成っている。
 
第一巻「春の雪」
第二巻「奔馬」
第三巻「暁の寺」
第四巻「天人五衰」
 
 この大作をどのようにまとめるのか?という思いを抱えながら観劇。
 基本的には東出昌大演じる松枝清顕の物語がベースで展開されるが、時間軸が行ったり来たりする構成で脚本が書かれていた。三島由紀夫の本で言えば第一巻を主軸にして四部作の他の三巻の物語の断章を挟み込む形で“再構成”されていた。なるほど、そうきたか。
 小説では本多繁邦の一生(青年期、壮年期、老年期)を描きながら、本多と若き日に会い二十歳で死んだ松枝清顕と、その生まれ変わりと思われる人物が登場し、本多繁邦に(=本多繁邦の方から)関わる形で展開していく(ちなみに清顕は「又、会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で」という印象的な言葉とともに死ぬ)。
 
 三島由紀夫がこの物語で何を描きたかったのか?ということについては多くの研究者に任せるが清顕の最期の言葉と符合するキーワードとして「輪廻転生」があることだけは確かだろう。
 物語の時間軸を動かすのは演劇のフレームワークを使うのが便利であり小説では難しい。もちろん出来ないことはないが、それは説明的な文言(e.g.「昭和十六年に話は飛ぶが、--」「一方、昭和十六年--」といった前置き)を挟まない限り成立しない。さらに時間軸を動かした場面に「輪廻転生」した人物を登場させるとなると、余程手練れた書き手ではない限り説明的になってしまい小説としては面白みに欠ける。そう言う意味で、この作品は演劇的であると言えよう。
 
 現在、過去、未来を前後させ、かつ役者も入れ替わりながら芝居が続く。三つのホクロの登場人物が松枝清顕(東出昌大)の生まれ変わりだと信じ、生涯をかけて本多繁邦(大鶴佐助、首藤康之、笈田ヨシ)は関わりを持っていく。ただ老年期に会い自分の養子に迎えた安永透(上杉柊平)だけは違った。贋の転生者であることに気づく。そのとき本多は余命僅かとなっていた。
 
 まだ公演は続いているのでこれ以上のネタバレは避けるが、ラストで観客は驚くことになる。「えっ?それってどういうこと?」と思う人もいるだろう。「ここまで来て、それ?」と思う人もいるだろう。真意は分からない。それこそ三島由紀夫に訊いてくれ、としか言えない。もしかするとこう言うかもしれない。
 
 「虚無の極北」へようこそ。
 
 最後にパンフレットに掲載されている文言を引用して終わりたい。
 
 想像してください。この景色に亀裂が走って、船が出現する! 一瞬のうちに、それまでのすべてが破棄され、再構築されるんです。でもその船でさえ、とどまらない。世界は、そうやってとめどない再構成が繰り返されている。
 
twinkleocean さん

 
twinkleoceanさん、「ハングマン」「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」に続き素晴らしいご考察をありがとうございました。
軽やかに4つのストーリーと時代を行き来する本作のアプローチは、まさに「演劇的」であったかもしれませんね。
また今後も弊社公演へのご来場お待ちいたしております。ありがとうございました。
 

 
舞台「豊饒の海」は12月2日(日)まで紀伊國屋サザンシアターにて上演中です。
その後、12月8日(土)・9日(日)に大阪公演がございます。
公演情報
千穐楽まで、沢山のご来場お待ちしております!

作品ページへ

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