舞台「人形の家 Part2」東京公演絶賛上演中です!
今回も、スマホアプリ「パルステ!」のゴールド/シルバー会員の中から選ばれた観劇レポーターの皆様よりレポートを頂戴いたしましたので、ここにご紹介させていただきます。
「人形の家」と言えば、NHKの朝ドラ「なつぞら」で、鈴木杏樹演じる亀山蘭子がノラ役を演じていたのが、記憶に新しい。
さて、本作 人形の家 Part2は、イプセンの140年前の代表作「人形の家」 の続編であるがゆえに、「人形の家」のあらすじを頭にいれてから観ることをお勧めする。
人形の家のラストで、ノラが夫と3人の子供を捨てて家を去ってから、15年後、突如戻ってきたノラ。
登場人物は、4人だが、2人芝居が5シーン続く。ノラ対乳母、ノラ対夫、ノラ対娘、ボクシングの足を止めた打ち合いのように、それぞれの感情をぶつけ合う。
女性の自立のストーリーが当時は評価されたようだが、夫はともかく子供3人を捨てたところは、どうも共感できない。母の匂いがしないんだよなぁ。
ノラが出ていったあと15年独身をつらぬき未練たらたら夫トルヴァルを、山崎一が愛情と嫉妬とプライドが交錯する複雑な感情を体現する。
主役のノラ役、永作さんは出ずっぱりで、膨大なセリフ量。
夫がいようが、子供がいようが、自我に目覚めて、自由奔放に生きる姿を、違和感なく演じる。
十字架好きの栗山民也の演出であろう、上手(かみて)側の壁にクロスのような照明が、ノラの言動に共感できるか観客に問いかけているように心を照らす。
イプセンが続編を描いても、ノラはこう生きたであろうという15年後の姿を、ルーカス・ナスが見事に再現。
原作のオマージュのような本作のラスト、イプセンさんも天国で微笑ましく納得してるでしょう。
雪次郎 さん
休憩なしの1時間45分
永作博美さんは出ずっぱりです
ノラが家族を置いて家を出てから
15年後の話
彼女は物書きとして、成功し
家族は彼女が亡くなったと
世間の目には写ったことで
それに甘んじて生活していたようです
娘と言い合うところ、
結婚と愛はちがうと、ノラの言葉
それに対して娘は、二人で苦境を
乗り越え、結婚生活を送ることが
愛だといいます
娘の方が世間一般からは支持されそうな
考え方で、ノラの方は自由を重んじる
奔放な感じでした。
最後はこれで良いのかって終わり方
ですが、深い話でした。
これから結婚する若い人、
何とか結婚を続けてきた熟年層
どちらがみても共感できる話です。
アチャ さん
常々、孤独というのは1人の時に感じる寂しさではないと思っている。家族や恋人、友人など、つながりの深い者たちと物理的には一緒にいるのに言葉も心も通い合わず、苦しさと所在無さと徒労感が増していく時に感じるもの、それこそが真の孤独ではないだろうか。
この舞台は、主人公のノラと元夫、娘、乳母の家族3人が一緒にいながら孤独なすれ違いを繰り広げる会話劇だ。
かつて夫婦だったもの、母娘だったもの、信頼し合っていた者同士が、まるで外国人と会話するように話が通じない。その不協和音がボディブローのように効いてきて、互いの凝り固まった価値観をグラグラと揺さぶっていく。
「全部難しい…人といることは。こんなに難しくなくちゃいけないのかなあ」元夫トルヴァルが絞り出したこの台詞に泣けた。
思えばイプセンの「人形の家」で、ノラは彼とほとんど話し合うことなく家庭という檻の扉を開けて出て行った。乳母と子供たちにも一切の説明もなかった。トルヴァルの行動が決定的だったとはいえ、それは余りにも唐突だったのではないか。
そういえば、本作で元夫と娘の登場シーンがいずれも扉からいきなりバーン!と入ってくるのが、元作との対比の意味で面白かった。他人が自分の中に入ってくるのも、消えてしまうのも、突発的で自分のコントロールの外にあるもののように思う。
本作はこの余りにも有名なイプセンの戯曲をルーカス・ナスが発展させた15年後の物語だ。再びノラが家族の前に現れ、激しくぶつかり合い話し合っていくうちに、相手と己を見つめ直し、新たな道へと踏み出す。
いや、結果はどうでもいい。このぶつかり合って主張し合い、相手を認めないにせよ互いの考えを知る行為こそ重要なのだ。そしてとても今日的なのだと思う。
イプセンの戯曲が書かれたのは140年前だそうだ。なのに、やはり私たちは似たようなことで苦しみ続けている。女性の権利やジェンダーロールの問題も劇的には改善されてはいない。
そういえば、観ながらちょっと現在放送中の「凪のお暇」にも似ているなあと思った。あれは日本版「人形の家PART2」なのかもしれない。
イプセンとルーカス・ナスの違いを考えてみると、やはり希望となるポイントは「対話」なのだと思う。
本作のノラが3人との対話を通じて新たな選択をするように、人と人は難しいながらも一緒にいて対話をすべきなのだ。相手のわけわからん言葉を聞き、わかってもらえない気持ちを言葉を尽くしてぶつけながら、そこから少しずつ変化できるのだと思いたい。
初日ということで、台詞の一部など荒削りな部分もあったけど、ちゃんと伝わる舞台になっていたと思う。美術や照明は以前見た栗山さんの「チルドレン」をシンプルにした感じだった。クロスする光は扉の近くで、やっぱりあそこがポイントなんだな。
栗ちく さん
15年前、夫と子供を捨て家を出て行ったノラ。そのノラが15年ぶりに戻ってきた。設定からして息苦しい1対1の対話劇。登場人物はノラの乳母、夫、娘、そしてノラ。さてさて、何が起きるのか?
まずは梅沢昌代さん演じる乳母。ずっと自分を押し殺して他人のために生きてきた人なんだなぁというたたずまい。いわゆる世間一般的な思考の持ち主。なんやかんやあったけどノラとご主人が元に戻って、「普通」の家になって欲しいと思う人物。
次に山崎一さん演じる夫。いわゆる男の世界の代表。身なりもよく立ち振る舞いもスマート。かつても意地悪でもなければ暴力をふるっていた訳でもないし、浮気もしていない。人々から尊敬される仕事をしていて、裕福であり、かつてはノラの頼みごとを聞いてやったり。ノラが出て行ったあとは乳母を追い出さずに置いてやり、家事一切を任せていた。
三番目が那須凜さん演じる娘。いわゆる若い世代の代表。とても聡明で頭の回転が速い。しかし、その望みは結婚して幸せになること。そのためなら法律を犯すのも厭わない思い切りの良さもある。これを聞いたノラは激しく動揺する。
そして永作博美さん演じる主人公ノラ。15年前、物質的には何の不自由もない家庭を捨てて出奔。その後お針子などをして生活し、現在は女流作家として成功。あるトラブルを解決するために15年ぶりに戻ってきた。
そこで繰り広げられるのはもはや格闘というほどの対話、対話、対話。15年をどうやって生きてきたのか。今それぞれは何を思うのか。それぞれの想いが語られるが、結局わかることは分かり合えないということでしかない。
価値観のすれ違いといえばそれまでなのだが。お互いに「わからない」ということを「わかる」前提にしなれけば、対話はバトルにしかならないし、その結果は物別れにしかならないだろう。日常はその微妙なラインで成り立っているのだが、ノラにしてみればそんなのは「嘘」の生活でしかないのかもしれない。
奈央 さん
ノラのその後は確かに気になっていましたが、こういう方法で見られるとは…
現代とは違う男女の地位の差は想像以上に凄まじいものがあったのでしょう。
それぞれの対話劇と言う構成も見応えがありました。
結局腹を割って全てさらけ出して話をしない限りみんな何となく誤魔化しつつ日々を送っているということなのでしょうか?
そう考えるといつの時代も同じなのではと思いました。
その後のノラの行方もまた知りたいです。
私がトシをとったせいかと思いますが、ちょっと聞き取りにくい所があったのが残念でした。
てるひめ さん
海外の作品はセリフ回しが独特なことが多く、ミュージカルのようなキャッチーさを感じにくいため、触れる機会が少ない上に、あの「人形の家」のその後、すなわち二次創作というハードルの高さ。果たして理解できるだろうかとおっかなびっくりで観劇。始まった瞬間そんな不安は吹き飛んだ。役者がうまいのは勿論のこと二人芝居なので混乱しない。フェミニズムは声が大きな人たちの極論やご都合主義や矛盾が目立つため世間からは嫌煙されがちだが、人間として扱って欲しいだけなのだ、という原点に立ち戻れる良作。いまだに男女が平等に扱われない日本において、老若男女問わず観てもらいたい。
りんりん さん
※8/16にレポートを2件追加しました!お送りいただきありがとうございました。
皆様、ご来場とレポートありがとうございました。またのご応募をスタッフ一同心よりお待ちしております!
舞台「人形の家 Part2」は2019年9月1日(日)まで紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演中です。
東京公演後は、福岡、富山、京都、宮崎、愛知、宮城と各地を巡演して参ります。
詳細は公演情報ページをご覧くださいませ。
「人形の家 Part2」
https://stage.parco.jp/program/dollshouse2/
沢山のご来場お待ちしております!