鄭 義信の新たな挑戦~特濃キャラ“ごった煮”は<br> 疲れた日々のカンフル剤

鄭 義信の新たな挑戦~特濃キャラ“ごった煮”は
疲れた日々のカンフル剤

2022年6月9日(木)

鄭 義信の新たな挑戦~特濃キャラ“ごった煮”は
疲れた日々のカンフル剤

 ドイツの劇作家、演出家ベルトルト・ブレヒトによる『三文オペラ』(1928年初演)は、クルト・ヴァイルの音楽の魅力も相まって、今も世界中で上演され続けている人気作だ。善良な人間は一人も登場せず、登場人物の多くは盗賊か娼婦か乞食という徹底ぶり。1728年にイギリスの劇作家ジョン・ゲイが書いた『ベガーズ(乞食)・オペラ』がモチーフで、社会とオペラの構造両方を風刺する原作の、ある意味ご都合主義的なラストを、ブレヒトは不条理かつ皮肉の効いた最終景へと巧みに書き替えている。
 
 ブレヒトの筆に、さらなる創作を加えようと鄭義信が名乗りを上げた。『てなもんや三文オペラ』がそれだ。登場人物はそのままに、敗戦から約10年後の大阪が舞台。大阪城公園のある一帯には当時空襲で破壊された大阪砲兵工廠があり、そこに埋もれている屑鉄を盗んで売りさばく人々を「アパッチ族」と呼んでいた。今作の主人公マックと仲間たちはアパッチ族であるほか、マックの結婚相手を同性のポールにするなど、鄭らしい翻案が施されている。
 
 作家・鄭義信は、在日コリアンである自身のルーツと「弱者(マイノリティ)への視線」を常に創作の軸に置く。数々の演劇賞を総なめにし、自身で映画化も果たした『焼肉ドラゴン』(2011年初演)は1970年、国有地にバラックを立てて住み着いた在日コリアン一家を中心に、はみ出し者たちがたくましく生きる姿を笑いと涙のうちに描く。シェイクスピアを大胆に翻案した『泣くロミオと怒るジュリエット』(20年)は敗戦から5年後、工場街ヴェローナで愚連隊から更生して屋台飲み屋を営むロミオと、田舎から働きに出てきたジュリエット、恋する二人が求めるささやかな幸せが血縁のしがらみに引き裂かれる鮮烈な悲劇だ。そして4月に旗揚げした自身の劇団ヒトハダの『僕は歌う、青空とコーラと君のために』(22年)では、戦後間もない東京近郊のキャバレーをホームとする日系二世、朝鮮人、ゲイなど訳ありメンバーぞろいの男性コーラスグループと店の女主人を通し、戦争に深く傷つけられ苦しみ続ける人々の「今」を、アメリカン・ポップスに乗せて紡ぎ出す。
 
 社会の底辺近くで暮らす鄭作品の登場人物たちは、金がない代わり生命力に溢れている。不器用ながら現実にしがみつき、時には世を拗ねて斜に構えて悪事に手を染めもするが、全力で人を愛し、困難や挫折に見舞われても己の「生」が燃え尽きるまで足掻き続ける。鄭の筆から生まれる人々の生き様は、そのまま『三文オペラ』の登場人物たちにも重なり、彼・彼女らが発する破天荒なエネルギーは、感染症禍が前提にある日々に倦み疲れた私たちのカンフル剤になるはずだ。
 
 鄭曰く、大阪弁の台詞はヴァイルの音楽と馴染みよく面白い効果が出ており、登場人物たちの心のひだを伝えるためにも有効とのこと。また海外とはいえ日々戦禍が報道される今を映して、マックに「戦争で負った傷」や「人一人の命の重さに対する苦悩」などの背景を加えたことにより、キャラクターがより重層的になったという。そんな今作の「マックが持つ男らしさや開き直った時の大胆さ、それとは裏腹の繊細さや人たらしな部分など多面的な魅力を、演じる生田斗真ははじめから備えていて頼もしい」と太鼓判を押す。演じる生田も、全編関西弁の台詞や鄭の笑いへのこだわりの強さに翻弄されながらも創作を楽しんでいる様子で、「大阪公演での客席の反応は気になりますが(笑)、感情と関西弁の言葉がピタッと合う瞬間があり、それがとても心地良いんです。鄭さんの演出は細やかに繰り返しながら、台詞やシーンの面白さをブラッシュアップしていくもの。カンパニー全員で汗をかく稽古はとても充実しています」と言い、確かな手応えを感じているようだ。
 
 シェイクスピアやチェーホフを翻案した劇作で成果を上げてきた鄭が、自身の作品世界に通じるところの多い原作からどのような飛躍を目指すのか。生田とウエンツ瑛士を中心に、渡辺いっけい、根岸季衣ら面構えの良い特濃キャストが揃う今作。全ての要素が溶け合った先の、パンチのある味わいを是非劇場で味わいたいと思う。
 
 
文・尾上そら
フリーランスの編集者・ライター。新聞や雑誌、書籍、映画や演劇のパンフレットなどで企画・編集・取材・執筆を手掛ける。演劇、ダンス、古典・伝統芸能まで幅広く取材。国内各地の舞台芸術にかかわる様々な人と事象を取材・記録している。
 
 

 

 
 
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【公演情報】
パルコ・プロデュース2022
『てなもんや三文オペラ』

公演日程:2022年6月8日(水)~6月30日(木)
会場:PARCO劇場
 
作・演出:鄭義信
原作:ベルトルト・ブレヒト
音楽:クルト・ヴァイル
音楽監督:久米大作
出演:
生田斗真 ウエンツ瑛士 福田転球 福井晶一 平田敦子
荒谷清水 上瀧昇一郎 駒木根隆介
妹尾正文 五味良介 岸本啓孝 羽鳥翔太 大澤信児 中西良介 近藤貴郁 神野幹暁
根岸季衣 渡辺いっけい
演奏=朴勝哲

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