舞台『ジュリアス・シーザー』解説と見どころ

舞台『ジュリアス・シーザー』解説と見どころ

2021年10月6日(水)

※作品の内容および結末に触れる記述が含まれていますのでご注意ください。画像▲画像クリックで拡大
 
 この作品の中核にある「シーザー暗殺」は、歴史に残る現実にあった出来事です。
 舞台は紀元前44年、共和政末期のローマ。
 歴戦の勇士で、ローマの守護者として市民にも深く信頼されている英雄シーザーが、宿敵ポンペイを打ち破り、凱旋したところから物語は始まります。
 民衆は熱狂的にシーザー一行を歓待。ローマ中が祭りのように盛り上がり、町のあちこちから音楽が聴こえ、シーザーを讃える歓声が絶えず上がっていました。
 
 そんな英雄に、「気をつけるがよい、3月15日を」と全く場違いな声をかけた者が一人。それは盲目の占師で、シーザーは気にも留めませんでしたが、その言葉は恐ろしい出来事を予言していたのでした。
 ローマでの権力を欲しいままにしているシーザー。ところがその存在を、ローマが長く守り続けてきた、民主的な政治を行う共和政の伝統を破壊する独裁者として危険視する考えが、キャシアスら元老院の貴族たちの中で密かにくすぶっていたのです。
 彼ら反シーザー派は仲間を募り、シーザー暗殺の意志を固めます。そのリーダーとして担ぎ上げられたブルータスは、紀元前509年に、当時の独裁的な王族を追放してローマに共和政国家を樹立した一族の末裔でした。暗殺には他にリゲーリアス、キャスカ、トレボーニアス、ディーシアス、メテラス・シンバ、シナも加わります。
 
 言葉巧みにシーザーを元老院に誘い出した反シーザー派は、その場で暗殺を決行。自身の右腕と思っていたブルータスまでが暗殺者であると知ったシーザーの、「お前もか、ブルータス? それなら、死ね、シーザー」という末期の言葉は、シェイクスピアの名台詞の一つです。◀見どころポイント!
 
 暗殺現場から逃げ去った、同じ元老院のメンバーでシーザーの腹心だったアントニーは、呼び戻されて反シーザー派と和解します。そのうえで、民衆の前でシーザーに対する弔辞を行わせて欲しいと願い、ブルータスは暗殺の経緯を自分が民衆に説明した後であればと、それを許しました。
 
 ローマ市民の前で行われた、ブルータスとアントニー二つの演説。
 民衆は、ブルータスが切々と説く独裁者シーザーの危険について納得し、暗殺は必要なことだったと支持の声を上げます。ところがアントニーが遺骸を見せながら、弁舌巧みにシーザーからローマが得た多くの恩恵を思い出させ、とどめにシーザーの遺言状の中に「死後、ローマ市民に一律の金を渡すように」との記述があることを話すと、民衆は一転して怒りを燃え上がらせ、暗殺者たちに復讐する暴徒と化すのです。 ◀見どころポイント!
 
 ローマの国と民を想う気持ちとシーザーへの友愛に引き裂かれながら暗殺に加わり、シーザーの死に誰よりも打撃を受けているにも関わらず、民衆に暗殺の必然を説かねばならないブルータスの真摯な言葉と、緻密な計算のもとに人の心の弱さを突き、巧みに感情をコントロールして扇動するアントニーの戦略的な演説。言葉を使った対照的な働きかけ、それによって急変するローマ市民のシーザー暗殺に対する反応は鳥肌立つほど鮮烈で、この作品一番の見どころです。◀見どころポイント!
 奸計に陥り、民衆にも裏切られ、追い詰められたブルータスやキャシアスら反シーザー派。そこにシーザーの甥で養子のオクテイヴィアスと手を組んだ、アントニーらの追手が迫ってくる。その時、ブルータスが下した決断、それに伴う言葉もまたシェイクスピアの台詞の美しさが集約した一節で、じっくりと味わっていただきたいシーンです。
 
 

 
 
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【公演情報】
パルコ・プロデュース2021
「ジュリアス・シーザー」
 
公演日程:2021年10月10日(日)~31日(日)
会場:PARCO劇場

作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:福田恆存
演出:森新太郎
出演:
吉田羊 松井玲奈 松本紀保 シルビア・グラブ/
藤野涼子 久保田磨希 智順 中別府葵 小山萌子 安澤千草 高丸えみり
岡崎さつき 鈴木崇乃 水野あや 清瀬ひかり 原口侑季 西岡未央/三田和代

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