ミュージカル『おとこたち』の部屋☆覗き見レポート Vol.4

ミュージカル『おとこたち』の部屋☆覗き見レポート Vol.4

2023年3月7日(火)

2014年に初演、2016年に再演され、演劇界に衝撃を与えた『おとこたち』(作・演出=岩井秀人)がミュージカルとなって新たに幕を開ける。音楽を担当するのは『世界は一人』(2019年)に続き岩井とタッグを組む前野健太だ。4人のおとこたちの60年に渡る物語がオリジナルミュージカルとしてどう立ち上がり、どんなふうに観客の前に姿を現すのか。連載第4回目となる今回は、“5人のおとこたち”にフォーカスをあてる。
 
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 Vol.4<ライターが覗き見た5人のおとこたち>

 
ミュージカル『おとこたち』本番まであと10日。スタジオでは1幕の通しと2幕の抜き稽古が行われていた。セットの横にはスピーカーが設置され、俳優たちはそれぞれピンマイクを装着している。
 
(あ、最初に謝っちゃいます、すみません!前回、Vol.3の最後に「次回は通し稽古の模様をお伝えできるはずだ」と書きましたが、それは次回、この連載の最終回にがっちりやらせてください。現場では丁寧かつ前向きに作品が立ち上がっています)
 
ということで、今回はこれまで稽古場で見てきた4人の“おとこたち”と作・演出の岩井秀人について、感じたことなどを書いていきたい。
 
本作『おとこたち』のストーリーテラーでもある山田役のユースケ・サンタマリア。これは彼の他出演舞台や、なんなら俳優の“素”が丸見えになる『いきなり本読み!』の時もそうだったのだが、良い意味で役と本人との境界がわからない。稽古場でもスっとその場にいてスっと山田になる。たまに所在がわからずスタッフが探すと、休憩時間を勘違いしスタジオの外にいて、部屋に戻るとまたスっと山田になる。超自然だ。多分、他の現場でもスっと何かになっているのだと思う。
 
子役として売れ、そのまま俳優になったはいいが、仕事が減ってアルコールに依存している津川。津川を担う藤井隆は基本、寡黙である。休憩中、他の出演者がわちゃわちゃしている時もひとり静かに書き込みがされた台本を読み、思索にふけっていたりする。が、閉じているかというとそうではなく、ディスカッションの場では優しい副部長のように共演者の意見を聴き、柔らかく自らの言葉を伝える。そして当然、笑いの呼吸の緻密さにおいては他の追随を許さない。
 
唯一の社会的成功者・鈴木を演じる吉原光夫。圧倒的な歌声を聞かせたかと思えば、買ってきたお菓子を不器用なしぐさでそっとスタッフに差し入れる一面も見せる。その経歴からミュージカルの王道を歩んできたと思われがちだが、劇団四季を退団後はアルバイトをしながら小劇場でストレートプレイの舞台に立ち、自ら主宰を務める劇団でさまざまな泥もかぶってきた演劇野武士である。稽古終了後、俳優陣の中では大体最後までスタジオに残り、組まれたセットを見つめている。
 
妻がいるのに若い女性と不倫を重ね、自らの嘘に追い込まれていく森田。橋本さとしはハイバイ版の森田像を180度ひっくり返した。橋本の森田はカラっと晴れたハワイの太陽のようでどうにも憎めない。しかし稽古の序盤、妻・良子の名前を素で愛人のそれと呼び間違えた時は女性スタッフの間で声なき声が漏れた。稽古場でも飛びぬけた明るさを醸しているが、日本のミュージカル界でジャン・バルジャンとエンジニアの両方を演じる偉業を成し遂げたのは橋本含め2人だけである。
 
そして4人の“おとこたち”の生みの親、岩井秀人。ある時期から岩井は立って稽古の様子を見るようになった。その手には気づいたことを書き留める小さなノートが握られている。稽古中の岩井は静かだ。声を荒げたり不機嫌なさまを表に出すようなこともなく、時に笑いながら俳優たちの芝居をじっと見つめる。この作品のことを誰よりも理解していながら、過去の絶賛をなぞるのでなく、今、目の前にいる俳優と向き合い、新たな『おとこたち』を作ろうとしているのが見てとれる。
 
さて、稽古は佳境である。
今日、2幕ラストの場面を観て泣いた。なぜ泣いたのかはうまく説明できない。これまで自分が失ってきたものを差し出されたような気がしたからかもしれない。
 
次回は覗き見の場所を都内稽古場から渋谷・PARCO劇場に移し、ミュージカル『おとこたち』最終舞台稽古(ゲネプロ)の模様をがっちりお伝えしたい。(あ、そういえば、今回フォーカスした5人の“おとこたち”には舞台以外である共通項があるのだが、お気づきになっただろうか?ヒントは「渋谷」)。では、次は劇場で!
 
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取材・文 上村由紀子(演劇ライター)
大学の演劇科を卒業後、舞台作品や映像への出演、FMラジオDJなどを経て取材の現場へ。幼少時からの観劇本数は約4000本。演劇・ミュージカルの専門家としてTBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界)、『アカデミーナイトG』等のメディア出演や番組監修、トークイベントの構成・司会も多数。
 
 
 

 
 
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PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
ミュージカル「おとこたち」
 
公演日程:2023年3月12日(日)〜4月2日(日)
会場:PARCO劇場

脚本・演出:岩井秀人
音楽:前野健太
出演:
ユースケ・サンタマリア 藤井隆 吉原光夫 
/大原櫻子 川上友里/橋本さとし
梅里アーツ 中川大喜
演奏:pf.佐山こうた b.種石幸也
 
 
▼プロダクションTwitter更新中!
ミュージカル「おとこたち」公式Twitter@otokotachi2023

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