『リチャード三世』演出:森新太郎さん スペシャルインタビュー

『リチャード三世』演出:森新太郎さん スペシャルインタビュー

2026年5月8日(金)

『リチャード三世』が映し出す“今”
 
シェイクスピア×演出:森新太郎×主演:吉田羊のシリーズ第三弾『リチャード三世』がまもなく幕を開ける。悪の権化とも言われるリチャード三世に吉田がどう挑んでいるのか。吉田が演じることでその悪はどう膨らみ、どんな怖さをはらませるのか。そしてまた、一人で何役も演じ分けながらすべての登場人物を描くというほかの9名のキャストたち。その実力と面白さをどう見せていくのか。演出の森新太郎は明言する。“観たことのない『リチャード三世』”になると。そしてそれは何より、『リチャード三世』に重なる現在進行形のこの世界を見せるためなのだと。 
 
 
――シェイクスピア作品を、森さん演出、吉田羊さん主演で上演するシリーズの第三弾として、『リチャード三世』を選ばれた思いから聞かせてください。

 第一弾『ジュリアス・シーザー』のブルータス、第二弾『ハムレットQ1』のハムレットはどちらも清廉な役柄で、羊さんの内側に持っているものとぴったり合っていました。第三弾をやるにあたって、今度はその清廉さが悪の道具として使われたらどうなるかということに興味が湧いてきたんです。今までと真逆のベクトルで、羊さんの清廉さが機能したら面白いんじゃないかなと。
 ただ、最初の動機はそうだったんですが、準備を進める中で世界情勢が大きく動き、この作品の持つ暴力性と重なり合うような世の中になってしまい、どうしても、我々の抱える憂鬱な気持ちと切っても切り離せない状況となりました。人が人を支配するとはどういうことなのか、そんなことを見つめ直せる舞台になればと思いながら、日々稽古に取り組んでいます。
 
――その「人が人を支配する世界」を見せるにあたっても、吉田羊さんが演じるリチャード三世は、説得力を持つものになりそうですか。
 
 基本的にシェイクスピア劇の主役には男性が配されるので、大きな声で力強く演じるというのが主流だと思いますが、羊さんは女性の身体なので、いわゆる男性的なマッチョな演技はできません。でも、彼女の中には常に感情の嵐が吹き荒れています。ささやいているのに、叫び声以上に激情が伝わってくる。シェイクスピア劇に立ち現れる吉田羊の“静かなる凄味”に僕は魅了されていて。
 だから、今回の『リチャード三世』でも、羊さんにはささやき声で人の心を支配していくような悪党になってもらいたいと思っています。直接的な暴力とはまた違うやり方で、人の心を蹂躙していく。
 
――リチャードはそうやって次々と人を騙していくことで、玉座に近い男たちを死に追いやり、女は手なずけていきます。たとえば、自分の父と夫を殺されたアン(愛希れいか)までもがリチャードに落とされる。なぜ騙されるんだろうと思ってしまいますが……。

 アンをあれほどわずかな時間で口説き落とすなんて、理屈で考えたら不可能ですよね。でも、羊さんのリチャードを観ていると、全然不可能じゃないと思えてくる。「この真実味で迫られたら誰だって騙されるよな」とアンに同情してしまう。愛希さんも言っていました。「台本を読んでいる段階ではわからなかったけど、この勢いで迫られたら落ちてしまう」って(笑)。こういう恐ろしいリチャードは、きっとまだ誰も観たことがないと思います。
 
――ほかにも、“観たことのない『リチャード三世』”になりそうな要素があれば教えてください。

 韻文の割合が非常に高い戯曲なのですが、台詞を詩のように歌い上げる舞台にはしたくないと思っていて。中世イングランドの権力闘争を描いた作品ですが、先ほどお話したようにあまりに現実と重なってしまったので、すべての場面を今まさに我々が生きている世界だと感じてもらえるような舞台にしたい。だから、俳優たちにもリアリティに重きを置いた演技を心がけてもらっています。言葉だけではなく、間や沈黙の持つ暴力性までも表現できたらと思っています。
 また、“史劇”にふさわしく、より叙事的な『リチャード三世』を目指しています。お客さんには一歩引いた視線で、俯瞰してこの物語を堪能していただきたい。極めて横長な舞台空間も、歴史絵巻のように眺めてほしいという考えから生まれたものです。どの登場人物もはじめは「自分こそが歴史を作っている」と信じていますが、やがて破滅をむかえ、そうじゃなかったことを思い知る。リチャード三世とて同様で、彼もまた、歴史に翻弄されるただのちっぽけな人間にすぎなかった。それをこの舞台セットで表現できればと思っています。
 まあ、後にも先にもこれほど横長な空間で芝居をすることはないと思います(笑)。第一弾、第二弾で築き上げてきた羊さんとの信頼関係がなかったら、ここまでの冒険ができたかどうか。
 
――キャストは、吉田羊さん、愛希れいかさん、中越典子さん、赤澤遼太郎さん、増子倭文江さん、浅野雅博さん、星智也さん、清田智彦さん、篠井英介さん、渡辺いっけいさんの10名。吉田羊さんがリチャード三世を演じ、ほかの様々な登場人物を9名で演じられるのも今回の演出の特色ですね。

 俳優の皆さんにはとっかえひっかえ、いろいろな役を演じてもらっています。シェイクスピア劇ですから、「世界は舞台、人は皆役者」というメタシアターにこだわりたかった。とどのつまり、そこには王や市民や暗殺者といった、たんなる役回りしか存在しないのだと。例えば、アンを演じる愛希さんはラトクリフという役も演じていて、これはリチャードが唯一心を許している側近です。ひとりの俳優が正反対の役を演じることに意味があると思っていて。ものすごいスピードで役替えしなくてはならないし、おまけにパペット操作までお願いしているので、皆さんには大変な負担をおかけしているのですが。
 
――稽古場はどんな雰囲気ですか。

 とても風通しのいい現場です。今回は特に問題意識を共有したほうがいいと考え、戯曲の読み合わせをいつもの倍ほど時間をかけて行いました。ベテランのいっけいさんをはじめ、どなたもご自分の考えを積極的に表明されていますし、僕のいないところでも話し合いを相当重ねられているみたいです。それが嬉しい。こうした意思疎通を可能にしている最大の理由は、やっぱり少数精鋭だからでしょうね。10人が10人とも、ほぼすべての場面に関わっているからこそのチーム力だと思っています。 
 
 
――森さんは、このシリーズに限らずたびたびシェイクスピア作品を演出されています。そもそもシェイクスピアの魅力をどう捉えておられますか。

 多くの演劇人が、一度味わうとなぜかまた戻ってきてしまう、それがシェイクスピアです。きっと、何かがあるんでしょうね(笑)。戯曲の粗っぽさが魅力なんだと思いますけど。たった1、2行で戦争が起きるし、たった1,2行で熱烈な恋に落ちる。その隙間を埋める作業がたまらなく面白い。どうやって飛躍させるか、やり方はもう無限にありますから。そこには圧倒的な自由があります。少なくとも僕にとってはそれが一番の魅力ですね。
 
――中でも『リチャード三世』は、戯曲としてどんな面白さを感じられますか。

 これは稽古しながら感じたことですが、これまで羊さんが演じてきたブルータスやハムレットには、自分の中に守るべきものがあったんですよ。それは、民主主義だったり、父親への思いだったりしますが、自分が何のために戦っているのかが明確だった。でもリチャードにはそれがまったくない。本当に空っぽの人間なんです。その空っぽを埋めるためにとにかく行動しているようなところがあって、その行動とは何かというと暴力なんです。そういう彼の生き方は、今の時代にはけっして珍しいことじゃないのかもしれない。ある意味、とても現代的な主人公だと思います。
 
――本当に今観るべき作品になりそうで楽しみですが、それでも「シェイクスピアは難しそう」と思われる方に最後にメッセージをいただけるでしょうか。

 数あるシェイクスピア作品の中でも、『リチャード三世』はとりわけエンタメ性の高い作品だと思います。中世イングランドの歴史など知らなくても、十分に理解できるし、存分にワクワクできる物語です。翻訳の松岡さんの言葉をお借りすると、シェイクスピアの“史劇”には、“悲劇”と“喜劇”と“ロマンス劇”、そのすべての要素が詰まっています。どうぞ楽しみにしていてください。劇場でお待ちしております。
 
 
 
取材・文:大内弓子
撮影:加藤幸広
 
 
 
『リチャード三世』東京公演は5月10日(日)~5月31日(日)までPARCO劇場にて上演!

当日券は開演の45分前よりPARCO劇場 当日券受付にて先着順で販売いたします。
東京公演 当日券情報の詳細はこちら
 
 
公演情報
 

パルコ・プロデュース2026

『リチャード三世』
▶︎作品の詳細はこちら
 
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:森新太郎
出演:吉田羊
   愛希れいか 中越典子 赤澤遼太郎 増子倭文江 浅野雅博 星智也 清田智彦
   篠井英介 渡辺いっけい

東京公演:2026年5月10日(日)~31日(日) PARCO劇場
大阪公演:2026年6月6日(土)~7日(日) 森ノ宮ピロティホール
愛知公演:2026年6月13日(土)~14日(日) 東海市芸術劇場 大ホール
福岡公演:2026年6月20日(土)~21日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
岩手公演:2026年6月27日(土) 奥州市文化会館 Zホール 大ホール
 

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